【セミナー採録】香港・中国市場&ジャパンジュエリー
2011年2月26日に開催した第6回ムスブセミナーの採録レポートです。
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香港・中国市場&ジャパンジュエリー
[開催日] 2011年2月26日(土)
[講師] 芳賀朝子 (異文化コミュニケーター)
経済成長が依然続く中国は、メイドインジャパンジュエリーの販売先として大いに期待の集まる存在。とはいえ、実際のところ中国はどんな市場か、日本のクリエイションへの関心はどの程度か、どんなものに流行の芽があるのかといった「実状が分からない」という方が多いのではないでしょうか。今回は香港企業に11年間勤務し、日本人として初めて「九龍青年会議所」の理事長を務めた経験をもつちの異文化コミュニケーターの芳賀朝子さんに、香港・中国市場おけるメイドインジャパンジュエリーの可能性をお伺いしました。
[講師プロフィール]
芳賀朝子 (はが あさこ)
1973年生まれ。大学卒業後に香港へ移住、現地の日系企業・外資系企業等に勤務。 商社・メーカーを中心に、役員秘書・営業・国際物流・バイヤー業務などに従事する傍ら、九龍青年会議所の理事長を務める。
2009年より東京に戻り、現在は『国内外を問わず活躍できる”人財”の育成』をコンセプトに、各種講師活動を精力的に行っている。
FBページ「香港!Hong Kong!」https://www.facebook.com/hkhklovehk
HP「香港!Hong Kong!」http://hkhklovehk.jimdo.com/
投資、お守りの意味合いが強い
香港のジュエリー
まずわたしのバックグラウンドをお話させていただきたいと思います。
大学卒業と同時に単身で香港に渡り、日系の会社、香港の会社と
5社くらい勤めてまいりました。
2、3人の規模の会社から、業界最大手まで、メーカー、国際物流、
発明家がやっているベンチャー企業など、いろいろパターンの会社を
渡り歩く中で、香港人やチャイニーズといわれる人たちが
どのような感覚をもって商売しているのかを、
肌身で感じて生活をしてきました。
その一方で、企業に勤めるかたわら、青年会議所に所属して、香港人の側で
華人のネットワークや、日本企業の方々と交流をしてきました。
青年会議所は、よく商工会議所と間違われますが違います。
世界中にネットワークがある組織で、リーダーシップを発揮できる人材の
育成を、プロジェクトを運営という体験型のトレーニングを通して実施する団体です。
政治家、自営業の方が非常に多く所属しています。
現在は日本で「異文化コミュニケーター」として活動しています。
異文化コミュニケータ―とは、異なるものが出会ったときに
どのようなチャンスが生まれるか、チャンスを生かすには
どのようなコミュニケーションをしたらいいか、そのお手伝いや、
関連するセミナーやワークショップの講師、さらに、
海外でビジネスのチャンスをつかみたいという方には、ビジネスのアドバイス、
海外就職のアドバイスもしております。
今日はチャイニーズと取引するときのヒントのようなものを、
わたしの経験を通してお話できたらと思います。
まず、チャイニーズ、中国人といわれる人はどんな人なのか。
中国に住んでいる人だけでなく、台湾人、香港、マカオもチャイニーズ文化圏です。
シンガポールは華人が圧倒的な社会ですのでチャイニーズ文化圏ですし、
マレーシアはマレー系の人々が大半ですが、経済を動かしているのは華人です。
取引をする上では、チャイニーズのネットワークが重要です。
それから、タイ。タイでは名前をタイ風につけなくてはいけないという決まりが
あるので、少し話しただけではどなたがチャイニーズ系なのかは分かりにくいですが、
よくよく聞くと、「わたしはチャイニーズ・タイです」と話される方がいます。
ですから、タイもチャイニーズ文化圏の一つと考えていいかと思います。
この中で、わたしが足かけ13年関わってきた香港の文化についてお話しします。
香港人についてのアクセサリーの意味づけは、ファッションというよりも、
「投資」「お守り」という意味合いが強いのではないかと感じます。
香港人で好まれるのは「翡翠」「24金」「水晶」で、
中でも翡翠は老若男女がお守りのように着けています。
中学生、高校生のカッコつけたお兄ちゃんの肌けた胸元に翡翠のペンダントが
のぞいていたり、犬の首輪に翡翠の勾玉がいっぱいぶらさっていたり。
おばあちゃんの中には、翡翠のブレスレットをお嫁にきてからずっと
外していないという方もいます。
香港では、永年身に着けている翡翠は、透明になってくるといわれています。
たしかに、お婆さんのブレスレットを見ると白っぽい色をしていて、
青々とした緑のブレスレットをしている方はいないですね。
水晶もたいへん好まれます。チャイニーズは風水をふだんから取り入れ、
重要視しています。水晶は風水グッズには欠かせません。
水晶の置物を気軽にプレゼントしますし、会社のデスクに水晶で出来た置物を置くOLも
たくさんいます。以前、香港でわたしが勤めていた会社で、
クズ水晶で作った樹の置物をデスクに置くのが流行ったことがありました。
水晶は、他人が触ると穢れると言われています。
触られちゃったといってトイレの洗面所で洗っていたら、紫色の着色がドロドロと落ちて、
透明になってしまったことがありました(笑)。
18金では資産価値ナシ、
王道は「24金ジュエリー」
香港ではいろいろなシーンで24金のものがプレゼントされます。
最たるものが結婚式ですね。モチーフは「喜」という漢字を2つ組み合わせた字(「囍」)、
ダブルハピネスが非常に多く使われます。
ちなみに、日本では結婚式では「寿」という字が使われますが、
香港では寿は「長寿」を表しおじいさんおばあさんの長寿のお祝いに使われます。
結婚式では使いません。
結婚式の習慣で「飲茶の儀式」というものがあって、
新郎は朝、新婦を家に迎えに行きます。
それを見送る花嫁の両親や親戚が、花嫁に24金のジュエリーをプレゼントします。
その後、新郎に連れられて新婦が新郎の家に行き、今度は新郎の親族が
24金のジュエリーを新婦にプレゼントします。
こちらはわたしの友人夫婦の写真です。ネックレスや腕輪など、プレゼントされたものを
見せていますね。腕輪も指輪も必ずペアで贈ります。
この写真は、お祖母さまが新婦につけてあげています。
純金の腕輪が2つ、翡翠の腕輪、細めの純金の腕輪です。
こちらは両腕にじゃらじゃらと腕輪をはめた笑顔の写真ですが、こういうふうに、
わたしはこんなにたくさんの金を持ってお嫁に行った、
もしくはお嫁に迎えられたということが
非常にチャイニーズにとっては重要なことです。
何も金を身に着けずのお嫁に行ったということはあり得ないですね。
この花嫁さんも、首長族もびっくりというほどの量の腕輪ですが(笑)、
なぜこういうふうに金をつけてお嫁に行くのか。
金は末代まで続く財産です。お金に困ったら金を売ればいいという考え方です。
財産としての目的があるので、24金でなくてはダメです。
18金のアクセサリーでは、資産として換金できないので。
普段、お嫁に行くときにもらった金のジュエリーを着けることはけっしてありません。
私の友人も貸金庫に入れて保管していると言っていました。
24金なので非常に重いです。このネックレスは(写真見せる)真ん中に
ダブルハッピネスの文字、右が龍、左が鳳凰です。
これは皇帝と皇后を意味しており、中国では非常によく使われるモチーフです。
そのほか、お花や、子豚をぶら下げた母豚のモチーフもとても多い。
豚は子だくさんの象徴です。伝統的なチャイニーズの間では子供が多いのは
とてもいいことなんですね。
子供は大きくなったら稼いで、還元してくれる。社会保障がなかった時代の名残で、
子供の多さが老後の生活の保障と考えられています。
この豚のネックレスは、当然わたしたちから見たらデザイン的にはあり得ないです。
もし日本人が結婚式の朝にそんなものをもらったら、これは何のつもりだと
わなわな震えると思いますが、漫画チックな顔をした母豚のおっぱいに、
子豚がじゃらじゃらとぶら下がっているネックレスを着けて
お嫁にいくということが、普通にあります。
もちろん最近では、金ではなく、デザインも美しい宝石のジュエリーを
結婚式のときに身に着けさせようとするジュエリープランナーさんも出てきました。
そうはいっても、披露宴に来てくださった方々に
「これほどに愛されてお嫁に行ったのよ」というアピールをするためには、
伝統的な24金をじゃらじゃらつけて行くということが必要になります。
マレーシアでは、噂によると、こうした24金のアクセサリーを用意できない人に向けた、レンタルの業者さんがあるといいます。
付加価値にお金を払うという
認識の違い
もう一つ、チャイニーズの価値観というか、これは香港に限定したほうが
いいかもしれませんが、付加価値にお金を払うという感覚があまりないです。
上海にはけっこう早い時期にスターバックスが出店しましたが、
香港はかなり遅れて入りました。
一杯のコーヒーが400~500円くらい、同じ値段で食堂のランチが
お腹いっぱい食べられます。なぜコーヒーにそのお金をかけなくては
いけないのかというのが香港人の当初の感想でした。
香港はイギリスの植民地でしたから、紅茶、コーヒーの文化が成熟していそうな
ものですが、ありません。最近ではそれでもコーヒーが入ってきましたが、
まだまだ人気は「茶餐庁(チャーチャンテン)」という香港でいうカフェ。
ここでは「鴛鴦(オシドリ茶)」という、コーヒーと紅茶を混ぜ、
甘いミルクとお砂糖を入れたものが人気です。
喫茶文化は、今はまだ香港はそれほど洗練されていない段階にあると思います。
ただ、この数年でだいぶ変化してきていて、実用面だけではなく、雰囲気などの
「付加価値」にもお金を払う価値があるということは認識されつつあります。
サンリオ、トトロ、ドラえもん――こういったものが香港では大人が大好きです。
どのくらい大好きかというと、ヒゲが多いキティちゃんとか、顔がくずれたター坊といった
コピー商品をプリントした生地が作られ、部屋着やパジャマになったりして、
街中の量販店にぶら下がっている。ベッドカバーとか、お部屋のアクセントに
なるものも作られています。
家は、美しく飾るというよりも、あるものをありったけ飾るという段階ですね。
飾り戸棚を開けたらなだれのように崩れ落ちそうなほど押し込まれたキティちゃんとか、
よく見られます。
これは庶民だけではなく、大豪邸もそう。
ヨーロッパの猫足のダイニングテーブルの上に、タイムマシンに乗ったドラえもんと
のび太くんの置物がのっていたりとか。
日本人にはあり得ない感覚ですが、香港人には普通にあり得る感覚なんですね。
どうしてこういう現象が起きるのかを私なりに分析しますと、
おそらく日本では、小学生、中学生、高校生と、
その年齢のステージに合わせてかわいいものが次々に登場する。
ところが、現在の香港の大人の人たちは子供のときにかわいいものに巡り合わずに、
大人になってはじめてトトロやキティちゃんなど、自分がかわいいものと出会う。
経済力があるから、大人買いしてしまうんでしょうね。
彼らにとっては新しいもので、こうしたキャラクター商品は、
決して子供っぽいものではないんだと思います。
ジュエリーを着けかえる
習慣が存在しない国
わたしが香港にはじめて渡ったのが1996年です。
この15年の香港の変化を私なりに観察して思うのは、購買力が高まってきた、
お洒落に目覚めてきたということがあります。
日本では、京都は着道楽、大阪はグルメな街といわれますね。
中国でも、上海ではファッションが先行し、香港はグルメの街。
とくに中華料理に関してはとても充実した街です。
一方で、ファッションのセンスはこの15年間でようやく目覚めてきました。
わたしが香港に渡ったときは、大人でもお化粧している人は滅多にいませんでしたが、
最近ではメイクをする女性が増えています。
洋服に関していうと、日本ではティーンエイジャーのブランド、20代ならこれ、
30代以上はこれというラインがありますよね。
自分が属する年代のラインではない服は着られないという雰囲気がありますが、
香港では年齢で区切ることはなく、自分が好きなものを着ています。
こうした現状を見ますと、お洒落に関するものは、
これから発達していく余地があるのかなと思います。
今まで、香港の人たちにとって、服はなんでもよくて、
ジュエリーは財産という考えでした。
日本だったら、ジュエリーもアクセサリーも、朝着けて、夜外しますよね。
香港には洋服に合わせてジュエリーやアクセサリーを着け替える」
存在しませんでした。24金は財産、翡翠は御守ですから、
基本的にはずーっと肌身離さず着けっぱなし。
彼女たちのジュエリーの留め金を見ると良く分かります。
着けている純金のジュエリーはSの字型のフックになっていて、
24金は柔らかいですから、身に着けたらS字型を指で潰します。
着け外しができないデザインにそもそもなっている。ブレスレットもペンダントもそうです。
それが、近頃は香港でもだんだん購買力が上がり、
海外にも出かけて情報も入るようになり、
ジュエリーやアクセサリーもお洒落で使いわけるということが起きています。
訪日外国人数が物語る
「日本好き」
香港の人たちにとって日本への憧れは非常に強いです。
日本製のものはもちろん、日本風のものもよく売れます。
(写真見せる)これは「日本城」というホームセンターの看板です。
100円ショップの感覚で、洗剤や日用雑貨を売っています。
日本製のものはほとんどありません。でも、「日本」というとイメージがいいので、
商売になにかとかこつけて売るということがあります。
こちらは「零食物語」の看板。アルファベットでOKASHI LANDと併記していますが、
「零食」はおかしという意味です。チェーン店でいたるところにあり、
日本のお菓子を扱っています。
こちらは「優の良品」。これもお菓子のチェーン店で、
あきらかに無印良品を意識していますね。
「の」が入ると日本製をイメージさせるということで、
「の」が入った看板は街中によく見られます。
また、日本へのリピート観光客が非常に多い。
香港人で日本に来る旅行者の7割は個人旅行だそうです。
そのリピーター率は約8割。何回も日本には飽きずに通っているんですね。
なぜそんなに日本が好きなのか。香港にはない自然が見られる、温泉がある、
日本食も香港人は大好き。香港で食べるよりも良質な和食が格安で食べられるし、
四季折々の素材で日本食は違うものが味わえるらしいと知ると、
四季が変わるごとに日本にやってきます。
日本国内を短時間で移動ができるのも魅力ですね。
JRパスという外国人観光客向けのJR乗り放題チケットを活用したり、
国際免許証を使って、レンタカーで自由に移動できる。
北海道の自然を車で周りながら観光するという香港人もいます。
日本は香港のテレビや雑誌で非常によく取り上げられています。
2010年のデータで見ると、訪日外国人数は861万人。
そのうちトップは韓国人で28%。トップの韓国は中国語でコミュニケーションが
できないので、チャイニーズ文化圏からは外します。
わたしが注目したいのは2位以下です。
2位が中国、3位が台湾、5位が香港、7位がタイ、9位がシンガポール、
13位がマレーシア。チャイニーズ圏だけで369万人、訪日外国人数の
43%を占めているんですね。
いかにチャイニーズ圏で日本への関心が高いのかということが分かるかと思います。
香港で流行を作り出す
ための方法
では、香港で流行を仕掛けるヒントをお話します。
日本へリピートする香港人たちは、非常によく日本のことを研究しています。
彼らには特徴が3つあって、「目新しいもの好き」「リサーチ好き」「シェア好き」
――いかにお得に買えたかとか嬉しくて、いろんな人に情報をすぐに共有します。
わたしにもよく、香港人の友達から「どこどこの割引クーポンが手に入ったから」と
一斉メールでクーポンが送られてきます。
彼らは非常にこまめに雑誌などで情報収集を行います。
香港の街中に新聞スタンドがあるので、手軽に雑誌を買います。
スーパーなどの店先でも雑誌が売られている。フリーペーパーも非常に盛んです。
まずはこうした活字媒体で情報を得て、次にインターネットで検索します。
ブログやフェイスブックなどで、これは良いものか悪いものか、非常によく研究します。
日本に来る香港人たちも、非常に研究を重ねたうえでやってきます。
実際に試して良かったものは、すぐにブログやフェイスブックにのせてシェアします。
わたしの知っている香港人でフェイスブックを持っていない人はいないというくらい、
若者だけではなく、ご年配の人も持っています。
フェイスブックには「ファンページ」がありますよね。
お店の側はフェイスブックのファンページで割引や新商品の情報を写真入りで
アップしていく、それを見てお客さんが増えていく。いいものがあると、
フェイスブック上で広がっていくということもあります。
先ほどフリーペーパーのお話しをしましたが、フリーペーパーには香港人が好きそうな
流行、レストラン情報、ファッション情報などがたくさん載ってます。
香港は人口規模も面積も東京都の半分しかないような小さな街ですが、
おもな駅ごとにフリーペーパーのラックが置いてあります。
香港人のほとんどがフリーペーパーの存在を知っていて、ほとんどが手に取っている――
つまり、フリーペーパーの情報は、香港人の共通した情報になっているんですね。
フリーペーパーの収入のほとんどが広告収入です。最初は無料だったけれども、
50円とか100円とか値段をつけて売るようになったフリーペーパーもあります。
(写真見せる)こちらは『コンシェルジュ香港』という、香港の日本人コミュニティ向けの
フリーペーパーです。香港の日本人コミュニテイもかなり大きくて勢力がありますが、
日本人倶楽部に会員として所属していますと、毎月無料でこれが配布されます。
現地に住む日本人の日常生活に必要なもの、香港のスポーツ観戦、クレジットカードごとの
お得なクーポン情報が載っています。
たとえば、香港でジュエリーを売りたい、対象として駐在の奥様方とか、
香港の日本人コミュニティに日本のセンスのいいジュエリーを販売したいなと思ったときは、
こういったものに何らかの形で広告を出すと、注目されると思います。
上海や台連でも現地の日本人コミュニティ向けに『コンシェルジュ』は出ていますので、
こういった媒体を利用するというのはビジネスの一つの手かと思います。
異文化コミュニケーションを
とるための心得
最後に、チャイニーズ世界への扉についてお話します。
日本人はコミュニケーションが苦手なのかなと思います。
どうも腰がひけてしまう、もしくは、ヨーロッパ圏の人たちと話すときにくらべて、
アジア圏の人と話すときには高飛車に、上から目線になってしまう日本人というものを
たくさん見てきました。
心理学で「交流分析」という分野がありまして、人間のコミュニケーションのパターンに、
人間には4つの型があると言われています。
1)私はOKあなたもOK=これが一番うまくいく、良好な人間関係を築く一番望ましいパターン
2)私はOKでもあなたがダメ=高飛車
3)私はダメであなたはOK=自分はちょっと卑屈、劣等感をもつ、相手を上に見る
4)私はダメであなたもダメ=人間不信
相手と場面によって人間はこの4つのパターンを使いわけながら
人はコミュニケーションをとっていると言われます。
日本人が欧米の外国人とのコミュニケーションとるときは3番目です。
日本人がアジア圏の人とコミュニケーションで「だからやりにくいんだよな」となったときは、
2番目になっていると思います。
先ほど「日本への憧れをもっているチャイニーズの人たちがこれだけ多いんですよ」と
お話をしましたが、せっかく相手が『自分はOK、あなたもOK』という気持ちで
アプローチしてくれているのに、日本人側が「私はダメ」、
もしくは「あなたがダメ」という姿勢をとっていては、
コミュニケーションはうまくいかないですよね。
卑屈になったり、高飛車になったりせずに、コミュニケーションを心がけるべきだと思います。
中国とビジネスをする
ときの「難しい点」
コミュニケーションの問題のほかに、
中国本土とビジネスをするときに難しいことの1つとして
「制度がころころ変わる」ということがあります。
本当に頻繁に変わりますし、変わると即日に効力を発揮することもあるので、
この変化に合わせていくにはよほど情報をもっていないと難しい。
もう1つの問題として、制度が変わると、運用していく末端の役人たちの解釈次第で、
対応が変わってしまうということが起きます。
あっちで通ったことがこっちでは通らないとか、どこまでが厳しく取り締まれられるのかとか、
よほど現場を観察していない限り難しい。
また、本土では「お金の回収が難しい」とよく言われますが、
これも事実です。現金決済などにしておかないと、
後からあのときの支払いをしてくれといっても、なかなか難しいというのは
事実としてあります。
ときどき「なぜ中国のビジネスマンは日本にあまり来ないで、
日本のビジネスマンが中国に行く機会が多いのか」と聞かれることがありますが、
日本政府は中国のビジネスマンに対してビザが厳しいんですね。
香港人、台湾人には厳しくありません。こういった問題があるので、
中国人と取引するときにはどうしても制約が生まれます。
チャイニーズ文化圏でのビジネスに
香港を利用する
香港人は『自分たちを中国を含めた国際ビジネスの“ハブ”として使ってくれ』と
考えていて、事実、それを打ち出してきたがためにここまで繁栄しました。
日本からビジネスとして中国へ参入するときに香港を使うメリットは、
政治的に中立であること。金融的、政治的にも安定しています。
香港ドルはアメリカドルと連動しています。
司法制度も中国本土とはまったく別です。
裁判制度はイギリス式のままです。今でも、裁判のときは、
イギリス風にバッハのようなカツラをかぶって裁判をする習慣を守っています。
特別行政区という立場を守っているし、守られていますので、
中国政府も香港政府に対してはそれほど手荒なことができません。
中国とのビジネスは、香港の会社にうまく仲介してもらうようなモデルが作れると、
対中国リスクというのが軽減できると思います。
香港人はやはり中国の扱いになれていますから。
また、訪日する人たちの43%を
チャイニーズ圏の人たちが占めているという現実を利用する。
こちらからものを売りに行くのではなく、
日本に来る購買意欲のある人たちをどういうふうに日本にいながら
活用するかという視点も必要なのではないかと思います。
香港のフリーペーパーや雑誌、テレビなどを利用して広告を載せるのも
一つの方法だと思います。
たとえば一つのフリーペーパーに継続的に情報を載せ続ければ、
あっというまに香港全体で共有されます。
また、香港で売られている新聞や雑誌は、隣のタイやマレーシアでも売られている。
香港のテレビ番組はタイやマレーシアでも見られます。華人社会の中で、
情報が非常に広がりやすい。
タイやマレーシアでも「香港ですごく流行っているものがあるぞ」と
注目をすることになります。
香港や中国にものを売りたいと考えたとき、香港の貿易会社と提携するのも
一つのアイデアだと思います。
そこがショーケースとなって、みなさんの商品を、
フリーペーパーなどを使って香港で宣伝する。
この商品は香港でも買えるけれど、日本に行けばもっといろいろ、
香港では買えない種類のものも買えるよと宣伝すれば、シェア好き、
リサーチ好きの香港人のこと、さっそく日本に来る。お得だよとなったら、
観光バスを仕立ててやってくるということもあり得ます。
最近、香港人の中で南紀白浜が大ブレイクしました。
日本の漫画の中で南紀白浜がとりあげられていて、
美味しいもの南紀白浜にはあるらしいよ、ということで大ブームになりました。
だから、日本のここでジュエリーが買えるよ、美味しいものが食べられるよという
情報をうまく媒体にのせられたら、ある日突然香港で大ブレイクして
香港人が次々に日本にやってくるということはなくはないと思います。
中国の人が香港に入るにはビザが必要ですが、比較的行きやすい“外国”です。
ですから、香港でブレイクしたものは必ず中国へも情報が渡ります。
香港を活用するとうことは、みなさんのビジネスを海外へ広げるための
一つの方法ではないかなと思います。
【質疑応答】
Q
かわいいものが香港人は好きだというお話がありますが、
キャラクターが好きなのか、かわいいモチーフも好きなのか、いかがでしょう。
A
両方ですね。モチーフとしては、豚が好きです。食べるのも愛でるのも好き(笑)。
香港にマクダルという豚のキャラクターがありまして、
香港人発の漫画で大ブレイクしたのも豚だったからだと思います。
十二支のいのしし年は香港では豚です。豚は富、繁栄の象徴、縁起のいいものです。
もしみなさんの中でかわいい豚をプロデュースする方がいらしたら、
ブレイクする可能性があるかもしれません。
あと、かわいいものは、日本人がかわいいと思うものと、現地の人がかわいいと
思うものはちょっと感覚が違うと思います。それは、現地に行ったときに
見ていただくといいと思います。
Q
香港にはたくさんヨーロッパ系のブランドショップがありますが、
あれは誰をターゲットにしているのでしょうか。
A
香港人ではなく、外国からの旅行客ですね。
香港は税金がかからないから、安く買えるということで来られる方がたくさんいますから。
ただし、最近は香港人も購買力が上がったので、ブランドを買う香港人は増えていると思います。
Q
プラチナとかホワイトゴールドは、香港の中ではどのような存在なのでしょうか.
A
白いタキシードとウェディングドレスの結婚式も、彼らは大好きです。
結婚指輪、婚約指輪も彼らは大好きで、プラチナも使います。
プラチナの結婚指輪を男性でもしている方もいて、おばあさんからもらったと。
おそらく財産としてそれもおばあさんから譲られたのではと思いますが、ただし、多くはないです。
日本で見る宝石に対する需要ほど、香港人の宝石に対する需要はまだ多くはないと思います。
香港にあるジュエリーショップの代表的なものは「金行(きんこう)」です。
これはファッション性はまったくない、財産性のみを目的としたジュエリーを売っています。
でも、もう少しファッション性を取り入れたジュエリーを売るお店もあることはあります。
Q
アジア圏の人たちが憧れている国や文化は、日本のほかにもありますか?
A
香港は移動が便利な立地です。香港は一年の半分が夏で、
気温が10度を下回ることは年間に数日しかない。
冬らしいものを体験するというのは、香港人にとって嬉しいことなので、
ウィンタースポーツをしに韓国、カナダに行く人もいますね。
台湾、タイ、フィリピンなど2時間以内に行けるところも人気です。
週末気軽に素足にサンダルひっかけていって、
おいしいものを食べて帰ってくるというエリアですね。
そのほか、ヨーロッパ圏も非常にポピュラーです。香港人は英語ができますので。
でも、これだけ物価が高いにも関わらず日本にこれだけリピートが高いということは、
やはり日本の人気は非常に高いと思います。
Q
日本では近年、宝石としての価値は高くはないけれども、
色がきれいな小さな半貴石のアクセサリーを重ね付けすることがすごく人気がありますが、
香港の若い人たちはどうでしょう。
A
宝石よりも、スワロフスキーがとても人気があります。
水晶のイメージでしょうね。色がついたものに価値を見出さないわけではないですが、
水晶をイメージするものに惹かれる傾向がものすごく強いのではないかと思います。
風水は香港では生活とまったく切り離せないものです。
これは有名な話ですが、香港の街中に、真ん中に大きな穴をあけたビルがあります。
この穴は「山から下りてきた龍がここを通るから開けたのだ」と、
香港人が本気で言っています。また、香港の二大銀行がビルを隣り合わせ立っているのですが、
片方の銀行が「あの建物の形は風水上けしからん、邪気がくる」ということで、
邪気を追い払うために屋上に2台大砲を置きました。それくらい本気です。
ですから、風水を踏まえた「身に着けたら運気も上がる」というジュエリーや
アクセサリーは、香港でも歓迎されると思います。
Q
癒し系の石、パワーストーンも日本では人気ですが、香港にありますか?
A
あります。電気仕掛け置物で、パワーストーの上から水が流れてきて
石をくるくる回すものもあります。いろんなオフィスにそれが置かれています。
日本ではパワーストーンが最近人気ですが、香港では昔から十分浸透しています。