2017年7月「甲府研磨産地見学バスツアー」レポートvol1
江戸時代、昇仙峡や金峰山で水晶の原石が発見されたことをきっかけに、
水晶研磨の技術が高まり、しだいにジュエリー全体が産業となった山梨県。
ジュエリー関係者以外の方は意外に思われる方も多いのですが、
じつは現在、山梨県は日本のジュエリー出荷額の3分の1を担っています。
そんな山梨県・甲府の宝石研磨などの職人さんたちの工房を巡る
バスツアーが7月6日・7日の1泊2日で開催されました。
山梨県庁主催、台東デザイナーズビレッジとジュエリー研究会ムスブは
コーディネーターとして協力しています。
今回は15名のジュエリーデザイナーさん、クリエイターさん、小売店さんたちが
晴れわたる青空のもと、新宿駅西口に集合しました。
さあ、ツアーの始まりです!
バスの中でマイクを回して自己紹介。バスが走る高速の脇はしだいに、
もりもりの緑が鮮やかな山並みが多くなっていきます。
最初の訪問先はシミズ貴石。
手摺りで180面の「桔梗カット」を生み出す、
世界で唯一の技を持つ研磨職人・清水幸雄さんが出迎えてくださいます。
研磨の手順を軽妙にお話しされながらも、研磨する手はノンストップ。
やすりの面の粗い研磨台から、徐々に滑らかな研磨台へと場を移動(話しながら)
レモンクォーツの原石がぴかぴかな宝石に変化し、一同「おおおー!」
こちらは種類豊富な原石のストックも自慢。
「このツアーで来られた方は次はお一人で来て、朝から原石を見て
ここを摺ってくださいと面を指定される方も多いですよ(笑顔)」と清水さん。
お昼は山梨名物、吉田うどんの店「戸田うどん」。
毎回驚くこの太さ。甘じょっぱいお汁がなんとも病みつきになるのです。
吉田うどんのルーツは、機織りが盛んなこの地域、機織りで忙しい女連に代わり、
男連がごはんを担当。ゴツイ男の手で練るうどんだからして、
こんなに太くなったのだとか。あと、「太いほうが腹持ちがいい」という
もっともな理由もあるそうです。
パンパンのお腹をさすりながら、徒歩で「かいてらす」で開催中の
『ジェムストーンフェア』へ。
各ブースのスペースが広く、店員さんにあれこれ質問しながら
ゆっくりと商品が見られるのがこのフェアのいいところ。
あっという間に時間が過ぎます。
本日最後の訪問先、「貴石彫刻のオオヨリ」と「詫間宝石彫刻」へ。
両所は50メートルほどという距離で、
若き研磨職人の大寄智彦さんと宅間康二さんは
「トモ」「タクマさん」と呼び合う幼馴染です。
お2人ともその技術と知識、センスの良さで
コラボレーションのリクエストがひきもきらない人気の工房。
どちらもお父さんが現役で、父子が一つ屋根の下で研磨に取り組む様子は
これぞ日本のモノづくり、という趣き。
クリエイターさんからの信頼が厚いのも納得です。
大寄父・大寄芳朗さんと、息子・智彦さん。
ほんわか雰囲気の素敵な研磨父子です。
康二さんは彫金の勉強もされているため、金属と石との両面から
アイデアが豊富。風貌からして「兄キィ」と呼びたくなりますね。
康二さんは石の「研磨」と「彫刻」の違いも丁寧に説明してくださいました。
前者が、原石を珠やファセット、カボションの石に磨き上げる作業、
後者が、原石に彫刻を施して仏像や器などを仕立てる作業。
時代の変化とともに両方を手掛けるようになった工房もあれば、
どちらかに特化している工房もあるそうです。
詫間宝石彫刻はもともとは彫刻からスタートしていて、お父さんの悦二さんは大ベテランの彫刻士。
さてさて、本日の残す予定はツアー参加者×地元の職人さんとの交流会のみ。
会場へ向かう途中、
大寄さんが自分のブランドの商品を販売するショップ「To Labo」と、
地元職人さんたちからの信頼も厚い、グローリーデザインの後藤晃一さんが
展開する「1DK」を訪問。
いつか自分のお店をと夢を膨らませるクリエイターさんたちにとって
ディスプレイや店のつくりなど、とても参考になったようです。
交流会では展示会の情報やよく行く道具屋さん、気になる石など
つくり手ならではの情報交換があちこちで花開きます。
そして毎回恒例、シミズ貴石の清水専務が手摺りした宝石が賞品という
なんとも太っ腹な大じゃんけん大会に会場は沸きに沸きました。
交流会は間髪いれずに2次会へとつづき、
甲府の熱い夜は更けていくのでした。