セミナーレポート 梶原昭雄さん『迷える名工のジュエリー打ち明け話』(後編)

某皇族の正装用ジュエリー

チョーカーとブレスレット、2本になっています。2本を組上げてチョーカーになり、ヘアバンドにも帯留めにもなる。真ん中は帯留めにするパーツで。多機能にしてくれという時代なのでね、皇室も。
他にもネックレスとかイヤリングもオーダーされたのですが、わたしが手一杯で。これに3か月くらいかかってしまって。
ネックレスやイヤリングは別の方がつくられました。
僕もこうしたものはやったことがありませんでしたが、でもいろいろ駆使すればなんとかなるんじゃないかと。平面図だけしかありませんでしたので、機能ですとか、作り手が全部考えてやらなくてはいけなかった。

組み立てをする時、圧着したり合体させる時は本来は全部ネジを使ったんですね。
ところが、扱う宮内庁担当者はご年配で(ネジが)見えない。ルーペ掛けてやるんですって。だから、「道具を使わずに手でできるようにしてほしい」と。
それですごく考えちゃいました。真ん中のところはコイルスプリングを使って取り外しが簡単にできるように。
クラスプのところにピタリと合体させて、互換性を持たせるのが難しかったですね。
機械でつくるならいいんですけどね、手でつくっているから。気が遠くなるくらい大変になってしまって。
計測できるように道具からつくったりして、クラスプを掛ける相手のほうの位置を決めていって。そういう0.1mmの世界がズレるときちんと付かない(合体しない)。
でも頑張れば何とか出来ると思いました。職人はアナログでやっていますから、機械みたいに正確に、と欲求されるっていうのが厳しいんですけれども、でも何とかできまして、宮内庁もとても喜んでくれたと。
さっき言ったみたいに喜んでくれただけで十分だと思いました。

【質疑応答】
キャドのことだけちょっとわからないけど、それ以外だったらお答えできると思います。

(質問:皇室関係の商品をつくるときに気を付けないといけないこと、ふつうのジュエリーをつくるときと違いがあるのでしょうか)
梶「セキュリティの問題ですね。セキュリティをしている会社でないと、無理なんでね。大分高いものになりますので。
途中で、宮内庁の人がしょっちゅう来られる。それで、そのまま(つくっている途中のものを)持って行っちゃう。ご本人に確認いただくためにね。
せっかくこっちがノッてきているのに、そのまま1週間も戻ってこないとか。そういうことがありましたね」

(質問:⑦の作品はたとえばどれくらいの時間でできますか)
梶「これはけっこうかかりましたね。地金で原型をつくっているんですが4日くらいかけているんじゃないですか。複雑に入り組んでいて、からみが厳しいですね。下の部分。上のパーツもそうですけど。
原型が4日です。加工するのは、キャストが上がればその後はそうでもない、半日くらいでできるんですが」

(質問:形合わせはどういうふうにするのでしょうか)
梶「パーツを想定して仮につくっていくんですね。合えばそのまま使いますけれども。こういう形ならこういう形だろうと推定してつくっていくんですけれども。
ただ、合わせるのが何回やっても上手くできなくて。いつもここで止まるとかね。そういうのを当たり前に(調整して)いかなくてはいけない」

(質問:手を掛ければもっとできるというところと、制限とのなかで折り合いをどうつけられるのでしょう)
梶「単価が非常に安いと困っちゃうんですけど、でも、ある程度の折り合いをつけて、ここまでというのは思うんですね。でも、どうしてもやりすぎちゃう。
その状態で品物を納めるわけですから、金額をもう少しなんとかしてくれないかということは言うんですが、むこうもお客さんにそれは言えないということですから、お互いに痛し痒しであって。
安い値段だから手を入れないということは、昔から決してしてません。通販で2万円くらいのものをつくって出した時も、2万円は廉価品かもしれませんが、出来上がったものは特品なんですという気持ちでつくってきましたから。どうしても手を抜くということはできないんですね。

(了・ジュエリー写真:梶原昭雄さん)

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